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Vol.003 手放せない不用品

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モノ好きなディーシー・ラボ所長の奥本健司が、モノやコトについて気ままに綴った「ケンボーのモノ語り」
時折登場するオークション事例は、その出品コピーや結果も記載。
その道の趣味、興味のない方にはさっぱり意味不明なアイドルトーク(無駄話)です。

 

 

学生時代に愛用した山道具を見つけた。
いや、そこにあるのは憶えていたけど、何十年も放ったままの、今の自分には不要のもの…。
とはいえ、とても捨てられないモノたち。
こうして改めて眺めてみると、当時の事が鮮明に思い出される。
そう、これらの古い道具は、私の思い出の中で生きているのだ。
実際、役に立たないものほど「宝物」になりやすい。

学生時代に山岳部に所属していた私は、バイトで得たお金は全て山行のためにつぎ込んでた。 
中高年だらけの今と違って、当時の山には学生が大挙して登っていた。
山ガール的な女子なんて見たこともなかった。
貧乏学生にとって、ほとんどが欧州の輸入品だった山の装備は、マッターホルンの高嶺のように高かった。
それだけに、憧れていたモノを手に入れた時の感動は、今でも懐かしく思い出せる。
当時の装備の三種の神器といえば、登山靴にピッケル、ザックか。 

しかし大学の部室にはキスリング(クラシックな横型ザック)がいっぱいあって、個人でそろえなくてもよかったのだ。 
ただし登場し始めていたフレームパックや、ウェストベルト付きの縦型ザックをと比べると、50kgを超える巨大な荷はめちゃくちゃ背負いにくかった。

ザック以外に重要な個人装備といえば、冬山で使うアイゼン。 
この3種の装備には、思い入れも思い出も一際多い。 選ぶ根拠はデザインとそのブランドの信頼性。 
仲良くなった山用品店のスタッフや雑誌などから情報収集し、さらにはそのショップでバイトして、道具ウンチクだけは一流のアルピニスト並みになっていた。 
一流の登山家と同じものを使えば、自分もそのようになれるような気がする。 
そんな錯覚が道具選定のエネルギーだったようだ。 
表向きには、命に関わるものだからと自分自身を納得させ、実のところはブランド価値を買っていたのかもしれない。 

愛用したピッケルはフランスはシャモニー地方の名門メーカー、シモンのスーパーD後期型。
熟練工が鍛えた鍛造品だ。

このピッケルを手に入れることを目標にバイトに精を出していたっけ…。
改めて振ってみて驚いた。
異常に重い。
当時50Kgそこそこのやせっぽちだった私が、よくもこんな重いピッケルを使ってたもんだ。
いまなら持っているだけで肩が凝る。 

そして、登山靴はガリビエール・スーパーガイドRD。 
一流登山家愛用のこれを履けば、自分もどんな難攻不落のルートも征服できそうな気がした。 
このスタイルと赤い紐のマッチングが絶妙…と、当時は思えたものだ。
事実これを履きはじめた頃から体力的にも余裕ができ、山の楽しさを感じられるようになった。

冬山になると、その靴にアイゼンという鉄のツメを履かせる。 
氷のように硬くなった雪に食い込ませ、スリップを防止するのだ。 
私が使っていたのは、当時独創的デザインで頭角を現していたシュイナード(パナゴニアの創始者で登山家)のデザインのもの。

今、これらの装備で山に登ると、間違いなく懐古趣味のファッションと思われるだろう。
これらは今見ても良いデザインだと思うのだが、いかんせん重い。

しかしそう感じるのは、私が軽さと機能が向上し、便利になった現代に生きているからだ。
同じ歩みでも、進歩したものは後戻りできない。
しかし、何かが忘れられているような気がする。
人間的な何かが…。
そう感じるのは、私がこれら古き良きアルピニズムの道具たちへの思い入れをもっているからだろう。

1979年冬山:燕岳から槍ヶ岳方面
1980年夏山:黒部渓谷、北穂から槍を望む

1981年秋山:槍が岳山頂より穂高連峰を望む
1981年秋山:槍沢・天狗池


山はいろいろなことを私に教えてくれた。
自然の驚異と力。 

自然の美しさとはかなさ。 
それだけじゃない、歩みを止めないことの重要さや、死ということについても考える機会を与えてくれた。 
懐かしい山道具は、そんな私の自己形成に一役かってくれたモノたち。
こいつらと共に、いつかもう一度あの頂を目指したいものだ。 
いくつもの峠を越えられるだけの体力を復活させ、40年前のルートを辿ってみたいのだ。 
過去の道具と共に、自分の過去と向き合うことで、新たな自分が見つかるかもしれない。 
とかいいながら…実際に登るなら巨大なザックは到底無理。
軽い荷で最新の機能的ウェアで軽快に、山小屋泊まりで行きたいのだが…。 

 

 

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