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IDLE TALK
私的ココロ







ディーシー・ラボの代表、奥本が、モノやコトそしてドーラクについて、その時々の興味を気ままに綴ったアイドルトーク(無駄話)。仕事も遊びも楽しむ方々との小休憩ページです。
また時折登場する趣味のコラム「道楽迷路」は、その道の趣味、興味のない方にはさっぱり意味不明、本当に時間の無駄となります。


過去の私的ココロ

お暇な方、もの好きな方ヘ贈る、愛と追憶のバックナンバー。





Vol.012
みんな純粋だった時代

文=奥本健二
写真=奥本健二、奥本智代子




新車の日産ブルーバードに乗ってうれしげな子どもたち。右端が私。
昭和37年5月30日広島市内



映画「ALWAYS 三丁目の夕日」を観た。
舞台は昭和33年の東京。
昭和33年といえば、私の生まれた年なのだ。
私の生まれ育ったのは広島市内。
地方都市だから、東京都心の激変の比ではない。
だから、私の物心ついた30年代後半の風景は、昭和33年の東京のそれと完全にオーバーラップする。
豊かではなかったけど、みんな純粋で明日への夢のあった時代。
アニメの『となりのトトロ』に描かれた時代とほぼ同じ時代である。

最近の日本映画はほとんど観ない私だけど、この「ALWAYS 三丁目の夕日」は、けっこう楽しめた。
懐古的ダイジェストでベタな進行なんだけど、いかにも当時にありそうなエピソードが散りばめられ小気味良かった。
圧巻なのがVFXで再現された当時の描写。
VFXもここまできたか、という感じだ。
特に感心したのは、あえて意識したと思われる当時のフィルムを回したような解像度と色合い。
そういや当時の写真はこんな色合いだったなぁ。
セピアじゃないけど、総天然色という名のカラー創生期の色。

実はこの色合いが好きで、今でも当時のカメラを使ったりしている。
レンズのコーティングのせいだろう、現在のネガやポジフィルムを入れても昔の色合いで写る。
そう、そのレンズのつくられた時代が写るのだ。


ライカM3、1958年後半製。即ち私とほぼ同時期の誕生。


当時の子どもたち、一番チビが私。   近所のトップモードのお姉さんと。


昭和30年代というのは、西暦にすると1955〜64年。
つまり第二次世界大戦が終結して10〜20年経った頃である。
戦後の混乱と復興も一段落し、アメリカから伝えられる豊かな生活様式と、次々に現れる画期的な家電に誰もが胸を躍らせ、生きる活気に満ちていた。

しかし一方では、自然環境はあちこちに残され、伝統的な日本の暮らしぶりも混在した、実にのんびりした時代でもあった。
冷蔵庫は氷を使って冷やす「氷室」。
スイカやビールは、井戸水と氷を入れた桶やタライで冷やした。
タライは日常的な生活ツールで、洗濯にも使えば行水にも使う。
私も行水で遊んだ夏の日のことは、今でも記憶に残っている。
電気釜もガスコンロも登場していたが、インスタント食品もあまりなく、食事は低脂肪で自然な和食(粗食)がメイン。生活習慣病とも肥満とも無縁だった。

テレビゲームもビデオもそして進学塾もなく、メンコやベーゴマといった素朴な遊びのできる路地裏や空き地はいくらでもあって、日が暮れるまで楽しんだ。
隣近所の大人の目が光っている路地裏は、不審者もまた無縁だった。

本来の懐古である中高年だけでなく、10代、20代の若者も新鮮さを感じる昭和レトロ。この時代は日本のシンプルライフを考える原点だ。
だからこれは、一過性のブームで終わるものではないと思う。




大分県は豊後高田市の“昭和の町”はレトロチックなまちづくりで人気。
穀物倉庫を改装した博物館を核に、商店街がまるごとレトロ通りに。
お問い合わせ先:豊後高田商工会議所 Tel.(0978)22-2412



アイスキャンデーの行商自転車が。   何もしないでもレトロな電器店。


21世紀となった現在、ここ10年程のモバイルツールやインターネットの爆発的な発達で、社会環境は大きく変化した。
しかし、戦後の10年程の日本の激変の比ではないと思う。
自動車や、洗濯機冷蔵庫などの家電、テレビというメディアなどが怒濤のように押し寄せ、その生活環境と情報量の激変は大変なものだったろう。

現在の変化についていけずオタオタしたり、焦燥感を感じたりするとき、この戦後10年の時代のことを考えたい。
そこにある違いは、夢を持つパワーや、未来へのワクワクする気持ちの差なんじゃないかと思う。
変化を受け入れ、参加し、楽しむことが必要なんだ。
私は懐古趣味だけではなく、学ぶことの多い当時の人々の生きる姿勢も、この昭和30年代がいとおしい理由になっている。

今あなたが、閉塞感に悩まされていたり、スランプに陥っていたなら、わざと流行とは逆のことをやってみるのも手だ。
懐古の中に遊んだり、昔流行っていた店に行ってみる。
そこから、新しい何かが生まれることだってあるんだから。




2005年12月05日 17時33分

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