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IDLE TALK
私的ココロ







ディーシー・ラボの代表、奥本が、モノやコトそしてドーラクについて、その時々の興味を気ままに綴ったアイドルトーク(無駄話)。仕事も遊びも楽しむ方々との小休憩ページです。
また時折登場する趣味のコラム「道楽迷路」は、その道の趣味、興味のない方にはさっぱり意味不明、本当に時間の無駄となります。


過去の私的ココロ

お暇な方、もの好きな方ヘ贈る、愛と追憶のバックナンバー。





Vol.007
旧い夏

文・写真=奥本健二







私には、恐らくはもう再びやって来ない夏のある部分がある。
素足であつい砂浜を走り、ぬれた波打ち際から、沖へ向かって体を倒す。
波が泡で私を取りまく。

次の波に出会うのはもっと深いところへ進んでからで、私は頭上を通過させるために波の面前で姿を消す。
そして波の背後に浮かびあがる。

私は一人ではなかった。
海へ飛び込んで行くために、黒い仲間が何人かいた。
(中略)

土用波が立ち、海の青さが一段と深まる。
大きなうねりが砂丘のうしろに続く高台から幾つも見える。
私たちは何も要らないもののように着物を脱ぎすてて、海へ走り込む。
心臓が活躍し、塩からい唇をなめる。

串田孫一:季節の断想(大和書房刊)より


※学生時代、好きでよく読んだ串田孫一さんのエッセイの一部。
 串田氏は今月89歳の長寿で亡くなられた。合掌。


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私の住む地方都市でも、昨日梅雨明けしたそうだ。
いよいよ夏本番。って何が本番なんだ?
という位、ワクワクするものがないんだよね。

海の思い出で言えば、私にも過ぎ去った夏が3つある。
1つ目は、串田さんの追憶のような、十代の無心に遊んだ夏。
2つ目は、独身の男女が車で海に乗り付けて楽しむ、言わばパーティー会場としての夏。
3つ目は、海に連れて行けとせがむ、子どもたちと行った夏。
3つとも終わってしまった夏だ。

それぞれの年代で、一緒だった仲間は今どうしているだろう。
同年代の彼らには、どういう夏が訪れているんだろうか。

Tシャツに短パンで、ビールにテレビか。
いや、どこかのリゾート地で、夏を謳歌しているかも。
そんなやつが居たら、ちょっと嫉妬するなぁ。
私はといえば、パソコンに向かっているだけで、前者と変わりない。

2人の子どもはそれぞれ大きくなり、娘は野外コンサートを楽しみにし、息子も親より友だちと出かけることの方が良くなっている。
そういう意味では,ヒマな夏になっちまった。

夏で一番連想するのは、ちょうど今、窓の外にも見える積乱雲。
私はその力こぶの密集したような姿を見るのが好きだ。

できれば、それが田舎の一本道で、古びたバス停があって、紗の着物に日傘の女性が居れば、絵になるんだけどなぁ…。
って、遠い目になっても仕方ない。

ホントは、ミドル世代になった今でも、重い腰を上げたくなるような、新しい夏を探したいんだけど。





2005年07月17日 17時01分

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