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IDLE TALK
私的ココロ







ディーシー・ラボの代表、奥本が、モノやコトそしてドーラクについて、その時々の興味を気ままに綴ったアイドルトーク(無駄話)。仕事も遊びも楽しむ方々との小休憩ページです。
また時折登場する趣味のコラム「道楽迷路」は、その道の趣味、興味のない方にはさっぱり意味不明、本当に時間の無駄となります。


過去の私的ココロ

お暇な方、もの好きな方ヘ贈る、愛と追憶のバックナンバー。





Vol.005
酪農家と牛のお話

取材・文・イラスト=奥本健二





あなたは、乳牛を間近に見たことがあるだろうか。

日本で一般的な種類は、白黒ブチ模様のホルスタイン種というやつ。
その他にもジャージー種とかガンジー種とか、毛並みの違う別種の牛もいるが、圧倒的に多いのは、このホルスタイン。

実際に見たことはなくても、ビジュアルとしてはとってもポピュラー。
小さな子どもだって、絵に描ける。
しかしその実態は、知らない人が多いはず。

そう、私だって取材の機会がなければ知らなかった。

まず、思い浮かべてほしいのは、牛の姿。
水平に近い背に角張ったお尻。
そして大きな乳房をぶら下げている。

言っておくけど、この姿って、すべてメスですからね。
わかってた?そう、乳房あるもんね。
じゃあ、乳牛のオスって見たことある?

見たこと無いけど、乳房だけの違いじゃないの?と思ったでしょ。
これがもう、ぜんぜん違う。
ずっと前に種畜牧場で見たんだけど、もう笑ってしまう位でかいんだ。

お尻の高さはそれほど違わないけど、そこから肩にかけて、急激に盛り上がり、その先に大きな頭がある。
通常のメスの体重が600Kg位なのに対して、1トンをゆうに超える堂々たる体格。
そのでかさは黒毛の闘牛を凌ぎ、姿かたちはバッファローに近い。
(それでいて、ブチ模様ってのが笑える)

そんなだから、すべてがビッグサイズ。
股の間にぶらさがるタマちゃんは、ひとつがラグビーボール位あるし、牛のコンドームってのも見たんだけど(なんでも見る好奇心)女性の使うストッキングくらいの長さだ。

よく聞くと、彼らはホルスタインの中でも最高の血統の持ち主らしい。
何万頭のうちの、最高の遺伝子をもった1頭なのだ。
見ると、長ったらしい北欧的な名前が付いていた。
(オゥ〜、君たち外人さんなんだね)

最高の体格の遺伝子は、最高に乳を出すメスの遺伝子でもあるのだ。
人間で言えば、ボブサップ並みかそれ以上。
そのランクの雄牛だけが、精液を提供できる種牛になれるのだ。

自分が牛だったら、間違いなく肉になってるだろな…。
ま、肉になるのと種牛になるのと、どっちも幸せとは言えないが…。

現在は、ほとんどが空輸された、冷凍精液で種付けされるらしい。
こうした雄牛の姿を、見られなくなっているのはちょっと残念だ。

そんな改良の結果が、今日の良い乳質の牛になっている。
現在1日に40Kgも、乳を出す牛はめずらしくないらしい。
しかも改良によって乳成分の濃い、良い乳質の牛が多くなっている。
通常600Kgの体重の牛なら、乾物で1日に20Kg位のエサを食べる。
牛乳パック1リットル分の乳を生み出すために、実に400リットルから500リットルもの牛の血液が、乳房をめぐっている。
母牛は毎日1万リットルもの血液を乳房に送り、乳を出すことに一生懸命に努力しているのだ。

乳は「血々」ともよばれる。
本当に牛乳は、母牛の命を削ってつくられたものだと思うし、そこが他の飲料と違うところなのだ。

本来牛乳は、子牛を育てるために出すもの。
出産して最初の5日間の初乳は、栄養素や免疫物質が多く含まれているので、子牛に飲ませ、工場には出荷しない。



ある活動的な酪農家に聞いた話も印象的だった。
彼女は自分にできるやり方で、酪農を伝える活動を続けていた。

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もっといろんな方に、酪農のこと知ってもらいたいですね。
そのために、なにが私にできるかなぁって思うんです。

今の消費者の方って牛を知らないんですね。
子牛を見て“これ、乳出します?”とか
ジャージー種の茶色い牛を見て“コーヒー牛乳を出すんですか?”とか
本気でいってるんです。
もう、びっくり。
こりゃいけんな、と思った。
それで、イベントにも牛を連れて行くようになったんですが、思った以上の人気でびっくりしてるんです。

いま、地元中学校で職場体験(1日6時間)という課外授業があって、うちの牧場でも生徒たちを受け入れているんです。
120〜130人の学年で、酪農体験希望の子が20人以上いたんです。
それは実家が酪農を営んでない子でですよ。
そんな子が、冬でも朝6時には自転車で手伝いに来るんです。
飼料をやったり、牛舎を掃除したり、もう重労働です。
たまに牛の出産に立ち会ったりして、「命の授業」だって感動してましたね。

後からその親御さんに聞くと、いつもテレビかゲームの、朝の遅いうちの子にそんなことが出来るとは思ってもみなかった、そして生き生きとして変わったって。
今まで家で会話が無かったのに、子どもがよくしゃべるって言われるんですね。

感動は、その人を変える力があるんだなって思いました。
やっぱりそれは、動物といっしょにいる影響かな。
牛の顔みて腹の立つ人いないでしょ。

こういうこと、これからもしていきたいなあ。
いろいろ感じてくれる子どもたちのために。
学校教育の中にもっと組み込めないかなと思うんですよ。
これが今の私の夢。

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取材して思った。
牛と共に酪農に生きる人、みんないい顔している。

現在、自分自身をパーソナル・ブランドとするという概念が、競争社会の中で言われている。
しかし根本は、振り向かせようとする技術なのではなく、彼らのように、自分らしく生きるということが肝要なのだ。
彼らは、とっくの昔に、パーソナル・ブランドをもっている。
そして今日も淡々と、信念と誇りを持って生きている。





2005年06月28日 20時16分

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