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IDLE TALK
私的ココロ







ディーシー・ラボの代表、奥本が、モノやコトそしてドーラクについて、その時々の興味を気ままに綴ったアイドルトーク(無駄話)。仕事も遊びも楽しむ方々との小休憩ページです。
また時折登場する趣味のコラム「道楽迷路」は、その道の趣味、興味のない方にはさっぱり意味不明、本当に時間の無駄となります。


過去の私的ココロ

お暇な方、もの好きな方ヘ贈る、愛と追憶のバックナンバー。





Vol.003
清流の癒し

文・写真=奥本健二






山深い渓流の5月は、まだ新緑のまぶしい季節である。
渓を渡る風も涼やかで、すごく心地いい。

私はそんな川に向かうのが、ここ10年ほどの恒例なのだ。
川の流れや、鳥の声、風の音以外は何も聞こえない、そんな場所に通うのが好きなのである。

何をしに行くのかって?
一応、釣りをするためなんだけど、釣れないこともよくあること。
そんなときは川辺に腰かけて、何時間でもボーっと景色を眺めている。
しかし、それだけでも満足して帰ることができる。
たぶんこれが私にとっての癒し時間なのだ。

そんなだから、上達もしないんだろうけど…。


まるで水がないかのごとく。私の影が底石に映る。

日本の川で渓流魚が生息しているのは、そのほとんどがその川を管理する漁協によって、養殖された稚魚や成魚を放流しているからだ。
だから、当然入漁料が必要になる。

その渓流魚の釣りが解禁されるのが、全国的に3月〜4月。
特にその初日などは、仕事を休んで釣りに出かける人も多い。
水温の関係で魚の活性は低いんだけど、そこは魚影の濃い時期だけに、相当数が釣れる。
解禁当初は釣り人でごった返す。(川だと実際数より多く感じる)
で、餌釣り師たちは、腰に付けた魚籠に魚をどっさりと持ち帰る。
だから、解禁一ヶ月位で魚がほとんどいなくなる川もある。
それが職漁師的な日本の渓流釣りの実態なのだ。

私もかつてはそんな餌釣りを楽しんでいた。
しかし今は、フライフィッシングという釣りのスタイルに転向している。
魚を掛け、持ち帰って食べるということよりも、魚がヒットした時の興奮が楽しい。
そしてなによりも、その美しい魚体を見ることの方が目的になってきた。


元気よく飛び出したかわいいやつ。水も魚も輝いている。

フライという釣りは、本物の餌ではなく、餌となる川の虫に似せた毛鉤で魚をだまして釣ろうというものだ。
魚のほうだって命がけだから、そう簡単にはだまされてくれない。
水温や天候、そこにすむ水棲昆虫、羽化の状況、魚の定位するであろう位置、そういったものを考慮しながら、これ!と思うフライを選び魚を誘う。
これをキャスト(投げる)し、ヒット(鉤がかり)させようものなら、心臓バクバク、めっちゃコーフンし、手が震え、ランディング(取り込み)できればしばし棒立ちとなり、やがてえも言えぬ至福を実感する…となるのである。(書きながらコーフンしてきた)

ま…、そういう駆け引きの釣りが、ゲームフィッシングとしてのフライというやつだ。

フライの本格的なシーズンと言えるは、魚の活性が上がり、餌となる水棲昆虫が大量に羽化する5月以降。
この頃になると、魚たちは水面に注目し始め、ドライフライと呼ばれる、水面に浮かせて流すフライの絶好の時期となるのだ。

数が釣れなくなり、夏が近づくと餌釣り師たちは、こぞって鮎釣りに移行するらしい。
そこでまた、川が静かになる。
私はそんな初夏5月〜6月あたりの、ドライフライに最適の川が一番好きだ。ただし魚は少ない…。


芽吹いた新緑がまぶしい。オッ黒っぽいのは虫か?いえ、引っかかった私のフライ。

本当に魚を釣るだけだったら、餌釣りのほうが釣れる。
それを、わざわざ鳥の羽根買ってきて、せっせと鉤にグルグル巻きつけて…なんていう作業は、気の短い私には到底無理だと思っていた。

実際、フライフィッシング自体も自己流だし、その上ほかの人と休みが合わず、単独釣行が多いから上達もしない。
へたくそなキャスティングで、フライをあちこちの木や服に引っかけ、ライントラブルも毎度のこと。
釣っている時間より、トラブルに対処している時間のほうが長い。
しかしどうしたことか、いまだキレずにこの釣り楽しんでいる。
効率がいいか悪いかは別にして、とにかくはそんな世界にハマってしまったのだ。

流したフライを凝視するときは、何も考えていない。
その時ばかりは、時間も納期も、お金も家族のことも考えていない。
少なくとも、自分の生活の中で、そんな時間はここだけしかない。
そして周りは、喧噪のない圧倒的な自然。
そこから帰るときは、心地よい疲労感に包まれる。

対象はなんでもいい、ただこういう癒しの時間を持つことは、日々の生活の中で、大切なことだと思う。


この林道の向こうに楽園がある。




2005年06月11日 13時04分

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